今学期になったらラテン語の受講生がガクッと減りました。
ものの見事に若い順から半分スパッといなくなってしまい、急に平均年齢が上がりました。
実用性は全然ないし、易しいとは言い難いし、純粋に趣味として楽しめないと続かないです。
しかし、もしロマンス諸語を深く学びたいのであれば、ラテン語の勉強はとても有益だと思います。
ところで以前習った先生もそうでしたが、古典学を専門的に学んだ人というのは実に博覧強記です。この学問の守備範囲が哲学や歴史、文学、神学など人文科学のみにとどまらず、数学や植物学など自然科学までおよんでいるためでしょう。
現在習っている先生もすごいです。受講生が少なくなった分のんびりムードが倍増し、先生の脱線トークも活発になってきました。教科書そのものをやっている時間より先生がウンチクを傾けている時間のほうが長いくらいです。(早く先に進んでも消化不良になってしまうし、先生の話がとても興味深いのでこの方が歓迎です)
先生はローマおたくといえるほどローマ時代に詳しいし(当たり前か)、日本人よりローマ人の末裔たるイタリア人のほうが、その土地で生まれ育った者の強みで言うことにも実感がこもっているし、有難味も増してきます。
さて、クラスで使っている教科書は、ローマ時代の生活や習慣、制度などをラテン語を通じて学ぶという体裁をとっており、今やっている章は当時の暦がテーマです。
超がつくほど厄介です。
初期には太陰暦を用い、1年は10ヶ月にわかれていました。現在の3月が当時は第1の月とよばれ、4月が第2の月、5月が第3の月と続きます。
その名残で現在でもヨーロッパ諸語では9月から12月までは第7から第10の呼び方(英語ならSeptember~December)が残っています。
なぜ3月が第1の月かというと、この時期に農作業が始まることが主な理由ですが、先生によれば戦争もこの時期から始めたそうです。後にローマ神話の神の名が与えられますが、3月はマルス、戦いの神です。
さすがに1年10ヶ月ではかなりズレが生じるので3月の前に2ヶ月追加されました。1年の初まりの月、Ianuar=Januaryには2つの顔を持つヤヌス神が当てられました。2つの顔はそれぞれ新旧をあらわしていて、年の初めをかざるのにふさわしい神だそうです。
さて、ジュリアス・シーザーは太陽暦であるエジプトの暦を参考にして大改革をおこないました。これがユリウス暦とよばれ、今日でもギリシャやロシアなど正教(オーソドックス)の国々で用いられているそうです。
ちなみに世界で一般に使われているグレゴリオ暦は、16世紀にユリウス暦を改良してつくられたものです。
ローマ帝国時代のカレンダーの読み方はややこしいことこのうえなし。
1日(ついたち)はkalendaeといいます。カレンダーの語源らしいです。
次の日を第2の日と呼ぶかと思えばさにあらず。月の第5日または第7日(月によって違う)をnonaeと呼ぶのですが、第2日以降はnonaeの~日前という言い方をします。(数えるときはnonaeを1日目として含めます。)
例えば1月のnonaeは5日ですが、1月2日だったら1月のnonaeの4日前(厳密にはnonaeから数えてさかのぼること4日前)といいます。nonaeの前日は文字通りnonaeの前日といいます。
そしてめでたくnonaeを迎えると、つぎにidusというヤツが。
これも月によって第13日だったり第15日だったりしますが、nonaeを過ぎると今度はidusの~日前といいます。
1月はidusが13日ですから、1月11日は1月のidusの3日前、12日はidus前日となります。
しかし厄介な本番はこれからなのです。
その月のidusまでは、例えば1月のidusまでは1月の何とかといいますが、idusを過ぎるともう次の月、つまり2月の何とかといわなくちゃならないんです。
1月のidus(13日)の翌日、1月14日は何と2月のkalendae(ついたち)の19日前(kalendaeから数えて)になっちゃうんです。
つまりidusの翌日からは、翌月のkalendaeの~日前というふうになります。
そうです。普通われわれは日にちを加算していきますが、ローマ人は目標となる日を定めてその日まであと何日(オリンピックまであと何日みたいな)と引き算していくのです。
ローマ人はよっぽど引き算が好きなようです。数字も99は100ひく1(un-de-centum)というし。
ローマの暦には多様な文化が色濃く反映されています。ケルトやエトルリア、ラテンのみならず、ゲルマンやエジプト、また多神教とキリスト教などその時代時代の要素を取り入れ変化してきました。
7月はユリウス(カエサル)、8月はアウグストゥス帝など支配者の名を冠したのみならず、8月は30日だったのをアウグストゥスがシーザーの月より短いのはヤダと31日にしてしまったり人間のドラマも垣間見えます。
おもしろいのは、日本の大安や仏滅のような吉日、凶日があり、そのほかにも集まりの日などがあったそうです。凶日にはなにもやってはいけないとか、民会を開く日などそのカレンダー(日本の六曜みたいなものか)に基づいていたらしいです。
授業でkalendae(イタリア語ではcalende)が出てきたついでに、calendeを使ったイタリア語の言い回しを習いました。
andare alle calende greche
意味は約束の日や期日をチャラにするといったことのようです。借りた金を返さない、なんていうときに使うらしいです。何故ギリシャかというと、ギリシャの暦にはcalende(という言葉)が存在しないので、その日を期日にしても実現しっこないということらしいです。
ところでこちらは英語のサイトですが、ローマ時代の暦について説明があります。
ちなみに私は日本の旧暦復活を願っています。
日本の伝統行事の多くは旧暦に基づいているので、新暦でやると実際の季節とずれていてものすごく違和感を感じます。

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